赤ちゃんの受診の目安
新生児や乳児を育てていると、「この症状は大丈夫なの?」「病院に行った方がいいのかな?」と迷うことが頻繁にあります。特に初めての育児では、少しの変化にも敏感になり、不安を感じるのは当然のことです。
一方で、「こんなことで病院に行ってもいいのかな?」「大げさに思われないかな?」と遠慮してしまうこともあるでしょう。しかし、赤ちゃんの健康に関することで遠慮はいりません。
気になることがあれば、遠慮なく医療機関に相談することが大切です。
今回は、赤ちゃんの受診の目安について、緊急度別に詳しくご説明します。これを参考に、適切なタイミングで医療機関を受診し、赤ちゃんの健康を守っていきましょう。
【緊急度★★★】すぐに救急外来へ
以下の症状がある場合は、時間帯に関係なく、すぐに救急外来を受診してください。
呼吸に関する症状
- 呼吸が苦しそう、浅い、不規則
- 顔色が青白い、唇が紫色(チアノーゼ)
- 呼吸が一時的に止まる(10秒以上)
- 胸がペコペコと大きく凹む
意識・活動性の変化
- ぐったりして反応が鈍い
- 呼びかけや刺激に反応しない
- けいれんや異常な動き
- 意識を失う
新生児・3ヶ月未満の発熱
生後3ヶ月未満の赤ちゃんの38度以上の発熱は、重篤な感染症の可能性があるため、必ず緊急受診が必要です。
激しい嘔吐・脱水症状
- 噴水のように勢いよく吐く
- 血液や胆汁(緑色)が混じった嘔吐
- おしっこが6時間以上出ない
- 口の中や舌が乾いている
外傷・事故
- 高いところから落ちた
- 頭を強く打った
- やけど
- 誤飲の可能性
【緊急度★★】できるだけ早めに受診
以下の症状がある場合は、診療時間内であればその日のうちに、診療時間外であれば翌日朝一番に受診しましょう。
発熱(3ヶ月以降)
- 38.5度以上の発熱
- 発熱が3日以上続く
- 熱と一緒に他の症状がある
- 機嫌が極端に悪い
哺乳・食欲の変化
- 普段の半分以下しか飲まない状態が24時間以上
- 母乳やミルクを全く受け付けない
- 飲んでもすぐに吐いてしまう
排泄の異常
- 3日以上便が出ない
- 水様便が1日に10回以上
- 便に血液や粘液が混じる
- 尿の色が濃い、臭いが強い
皮膚症状
- 全身に広がる発疹
- 水ぶくれや膿を持った発疹
- 発疹と発熱が同時にある
【緊急度★】様子を見ながら受診を検討
以下の症状は、1〜2日様子を見て、改善しない場合や悪化する場合に受診を検討しましょう。
軽度の症状
- 軽い鼻水や鼻づまり(授乳に支障がない程度)
- 軽い咳
- 軽いおむつかぶれ
- 乳児湿疹
- 軽い便秘(機嫌が良い場合)
月齢別の注意点
新生児期(生後28日まで)
新生児期は免疫力が最も弱く、些細な症状でも重篤化する可能性があります。
特に注意すべき症状
- 黄疸が強い、または長引く
- 体重が増えない、または減少する
- 授乳量が少ない
- 元気がない
- 体温が36度以下、または38度以上
黄疸について 新生児黄疸は生理的な現象ですが、生後2週間を過ぎても続く場合や、白目や皮膚が濃い黄色になる場合は受診が必要です。
生後1〜3ヶ月
予防接種の開始 生後2ヶ月から予防接種が始まります。接種後の発熱や腫れは正常な反応ですが、高熱が続く場合は相談しましょう。
成長発達のチェック
- 首のすわり具合
- 目で物を追う反応
- 音に対する反応
- 体重の増加
生後3〜6ヶ月
活動量が増え、周囲への関心も高まる時期です。
事故予防
- 寝返りを始める時期なので、転落に注意
- 何でも口に入れるようになるため、誤飲に注意
- 手の届く範囲に小さなものを置かない
離乳食開始に向けて 生後5〜6ヶ月頃から離乳食が始まります。アレルギー反応に注意し、新しい食材を試す際は平日の午前中に少量から始めましょう。
受診を迷った時の判断基準
「いつもと違う」感覚を大切に
保護者の直感は非常に重要です。以下のチェックポイントを参考にしてみてください。
- 機嫌はいつも通りか
- 哺乳量はいつも通りか
- 活動性はいつも通りか
- 泣き声はいつも通りか
- 顔色はいつも通りか
これらのうち一つでも「いつもと違う」と感じた場合は、受診を検討しましょう。
不安の程度も判断材料に
医学的には緊急性が低くても、保護者が強い不安を感じている場合は、受診することで安心を得られます。「こんなことで病院に行ってもいいのかな?」と思う必要はありません。
夜間・休日の対応
救急外来の利用
緊急度★★★の症状がある場合は、迷わず救急外来を受診しましょう。緊急度★★の症状でも、急激に悪化している場合は夜間受診を検討します。
電話相談サービス
小児救急電話相談(#8000) 全国共通の相談窓口で、夜間や休日に小児科医や看護師に相談できます。
自治体の相談窓口 各自治体の医療相談窓口も活用しましょう。事前に電話番号を控えておくと安心です。
受診時の準備
症状の記録
受診前に以下の情報を整理しておきましょう。
- いつから症状が始まったか
- どのような症状か
- 症状の変化
- 機嫌や食欲の状態
- 体温の記録
持参するもの
- 母子手帳
- 健康保険証
- 医療証
- お薬手帳(使用している場合)
- おむつ・ミルクなど
医師への相談のコツ
具体的に伝える 「何となく調子が悪い」ではなく、「いつから」「どのような」「どの程度」の症状があるかを具体的に伝えましょう。
気になることは遠慮なく質問 些細なことでも、気になることがあれば遠慮なく質問しましょう。医師も保護者の不安を理解しており、丁寧に説明してくれるはずです。
セカンドオピニオンの活用 診断や治療方針に不安がある場合は、別の医師の意見を求めることも大切です。
かかりつけ医の重要性
かかりつけ医を持つメリット
継続的なケア 同じ医師が継続的に診てくれることで、赤ちゃんの成長や健康状態を総合的に把握してもらえます。
相談しやすい関係 顔なじみの医師であれば、些細なことでも相談しやすくなります。
緊急時の対応 普段の状態を知っている医師であれば、異常をより早く察知できます。
かかりつけ医との関係づくり
定期健診の活用 1ヶ月健診、3ヶ月健診など、定期健診の機会を活用して、医師との関係を築きましょう。
気軽な相談 予防接種の際などに、日頃の気になることを相談することで、コミュニケーションが取りやすくなります。
信頼関係の構築 医師の説明をよく聞き、不明な点は遠慮なく質問することで、お互いの信頼関係が深まります。
家庭での観察ポイント
日常的なチェック項目
- 体温(平熱を把握)
- 機嫌・活動性
- 哺乳量・授乳回数
- 排泄の回数・性状
- 成長発達の様子
記録の大切さ
育児日記の活用 体温、哺乳量、排泄、睡眠時間などを記録しておくことで、受診時に正確な情報を伝えることができます。また、成長の変化や体調の変化にも気づきやすくなります。
写真の活用 皮膚の症状や便の性状など、言葉で説明しにくいものは写真で記録しておくと、診察時に役立ちます。
保護者の心のケア
不安との向き合い方
赤ちゃんの健康を心配するのは自然で大切な感情です。インターネットの情報に振り回されすぎず、信頼できる医療機関の意見を最優先にしてみてください。
サポートシステムの活用
家族、友人、地域の子育て支援センター、産後ケアサービスなど、様々なサポートを活用してみてください。一人で悩みを抱え込む必要はありません。
産後ケアとの連携
専門スタッフによるサポート 産後ケア施設では、経験豊富な助産師や看護師が24時間体制でサポートします。赤ちゃんの体調変化にも迅速に対応し、必要に応じて医療機関との連携も行います。
育児指導 正しい授乳方法、おむつ替えの仕方、赤ちゃんの観察ポイントなど、基本的な育児技術を学ぶことで、日常的な健康管理がしやすくなります。
心理的サポート 育児の不安や疲労について、専門スタッフに相談することで、心理的な負担を軽減できます。
まとめ
赤ちゃんの受診の目安を知ることは、適切な医療を受けるために非常に重要です。しかし、最も大切なのは「迷った時は相談する」という姿勢です。
緊急度の高い症状を見極めることも大切ですが、保護者の直感や不安も重要な判断材料です。「大げさかもしれない」と思っても、赤ちゃんの健康に関することで遠慮は不要です。
また、日頃からかかりつけ医との関係を築き、定期健診や予防接種の機会を活用して、気軽に相談できる環境を作っておくことも大切です。
赤ちゃんの健康を守るのは、保護者だけの責任ではありません。医療従事者、家族、地域のサポートなど、様々な人たちと協力しながら、赤ちゃんの成長を見守っていきましょう。
何より、保護者自身が健康で安定していることが、赤ちゃんにとって最大の安心材料です。困った時は一人で抱え込まず、適切なサポートを求めながら、育児を楽しんでいけたらいいですね。